「指圧」は「し-あつ」と読みます。一字目の「指」はゆび、二字目の「圧」はおすという意味で、二つ合わせて指で圧す手技を指しています。英語にはこの言葉の訳語が置かれないまま、SHIATSU という音のかたちで世界へ渡っていきました。
1925年に浪越徳治郎が名づけたこの二文字を、浪越指圧サロンは帝国ホテル東京 本館中2階でいまも看板に掲げています。海外からいらしたお客様に、読み方と意味をたずねられる機会が多くあります。そこで今日は、言葉そのものが日本の外へ出ていった道すじのお話です。
「指圧」は、し-あつと読みます
ローマ字では shiatsu と書きます。shi-a-tsu と三つに区切って読むと、日本語の響きにいちばん近づきます。shiatzu や siatsu と綴られているのを見かけることもありますが、辞書に載っているかたちは shiatsu です。
名前が手のしていることをそのまま説明している点は、この言葉のおもしろいところです。なぜ名前を立てる必要があったのかは、連載の第1回「指圧という言葉の、出どころ」に書きました。
英語には、訳語が置かれませんでした
指圧が海外に紹介されはじめたころ、英語には fingertip pressure という訳が添えられていました。指先の圧、という説明そのままの言い方です。
その訳は定着しませんでした。fingertip pressure と言ってしまうと、圧していく場所の決まりや順序、手のひらに体重を乗せていく部分までは届きません。呼ぶ側が説明よりも音のほうを選んで、SHIATSU が英語の文章の中にそのまま置かれるようになりました。
二代目・浪越徹が、英文書『SHIATSU』を世に出しました
その道すじをひらいたのが、徳治郎の長男である二代目・浪越徹です。徹は英文の著書『SHIATSU』を刊行し、日本の外に向けて指圧を説明しつづけました。
わたしたちの手もとにある沿革には「指圧の世界的普及の第一人者は浪越徹であり、これは浪越徳治郎も認めていた事実である」と記されています。父が名づけて、長男が英語で語り直したという順番です。二代目の歩みは浪越徹のページに、四代までの流れは浪越指圧の系譜にまとめています。
英語の辞書に、日本語のまま載りました
The Oxford English Dictionary には、いま shiatsu という項目があります。judo や sushi と同じく、日本語からそのまま英語に入った言葉のひとつです。
辞書に載るということは、訳さずにその音を使う人が英語圏に十分いるという意味だと、わたしたちは受け取っています。翻訳されなかったことが、かえってこの言葉を遠くまで運びました。
指壓と지압 ― 漢字の土地には字が残りました
漢字を使う地域には、音ではなく字のほうが残りました。中国語では指壓(指压)と書き、韓国語では지압と読みます。どちらも「指で圧す」という字面を、それぞれの発音で受け継いでいます。
フランス語やイタリア語、スペイン語では逆に音が残りました。le shiatsu、lo shiatsu と冠詞だけが現地の言葉になって、中身は shiatsu のままです。字が渡った土地と音が渡った土地があって、どちらも1925年の二文字にさかのぼります。
名前が先に広まって、中身はあとから伝わります
名前だけが先に世界をまわって、中身はあとからゆっくり伝わっていきます。SHIATSU という音は知っていても受けたことはない、というお客様に毎日お会いします。その音の中身をお渡しするのが、言葉の出どころにいるわたしたちの役目です。
サロンは帝国ホテル東京 本館中2階にあります。11時から19時まで年中無休で、最終のご案内は19時の開始です。施術者は全員が国家資格を持っています。
料金は60分16,500円、90分22,600円、120分28,600円です(税込)。ご予約はお電話 03-3581-7354 か、メール reservation@
指圧は、国家資格「あん摩マッサージ指圧師」に基づく施術です。医師による診断・治療に代わるものではありません。
浪越指圧サロン